濃厚な家電リサイクル

これからは頭を使って投機で金もうけする時代だ.今どき投機をやらない人は世捨て人だ」と言ってのけました。 今こんなことを言うと,冷笑なり失笑を買うでしょうが,87年当時は,大部分の人がこの台詞を聞いて「そうだ,そうだ,まったくだ」と思ったのです。
バブルの時代は,ぜいたくが格好よく見えた時代でした。 もともと日本人は質実剛健,質素倹約を尊ぶ国民性の持ち主だったはずなのですが,87年から90年にかけての4年間,ぜいたくが格好いいというふうに,日本人のライフスタイルの美意識が大異変を遂げたのです。

ブランド物の衣類やバッグ,豪華なホテルやレストランでの食事がもてはやされました。 幸いにも,そういう美意識が支配的だったのは,わずか4年間に過ぎませんでした。
91年5月に景気が下降局面を迎えると,人々の美意識が再度の180度転換を遂げました。 突如,N さんの『清貧の思想』( S 社,1992年)という本がベストセラーになったりもしました。
清貧とまではいかないまでも,質素倹約,質実剛健が格好よく見えるようになったのです。 ライフスタイルの美意識が環境調和型の方向に変わったこと自体は,歓迎すべきことだったのです。
92年6月,M 内閣が「生活大国5カ年計画」を閣議決定いたしました。 その中に「国民は簡素なライフスタイルを志向すべきである」と書いてあります。
M 総理にそう言われたから,皆が簡素なライフスタイルを志向するようになったわけではありませんが,実際問題としてそうなったのです。 その結果,平成不況が深刻化したという言説にも一理があります。
バブルの時代のような旺盛な,というよりもどん欲な消費意欲はもはや消え失せました。 個人消費はGNPの56%を占めるわけですから,個人消費が勢いよく増えてくれないと,景気はなかなか盛り上がりません。

そのうえ平成不況下に,モノの値段がどんどん安くなったため,個人消費支出はなかなか回復しません。 以上のように考えを進めてくると,結局,87年から90年にかけてのバブルの時代こそが「異常」だったと言わざるを得ません。
その異常な4年間に,株価や地価が途方もなく上がった。 そうした「異常」が正常化される過程が平成不況であったと理解すべきなのです。
96年4月の失業率が3.5%にまで高まりましたが,欧米諸国に比べればはるかに低いのですから,環境調和型経済への移行を図るための余力は十分に蓄えられている,と言って差し支えないのではないでしょうか.前置きが多少長くなりましたが,日本のマスコミが地球環境問題を取り上げ始めたのは,1988年,バブル経済の真っ只中のことでした。 88年6月のトロント・サミットで,地球環境問題が重要な議題の一つに採り上げられ,サミットが終了して1週間後に,同じトロントでカナダ政府主催の「地球環境問題に関する国際会議」が開催されました。
当時,日本の政府は地球環境問題にほとんど関心がなく,急きょ1人のオブザーバーが派遣されたにすぎませんでした。 この会議で「二酸化炭素の排出を抑制しなければ,21世紀末に地表の平均気温がおおむね3度上昇し,海水面が60センチ上昇する」というショッキングなリポートが報告されたり,フロンガスによるオゾン層破壊のフイルムが公開されたりしました。
この会議がきっかけとなって,世界中のマスコミが地球環境問題に多大の関心を寄せるようになり,翌89年のパリアルシュ・サミットでは,経済宣言の3分の1を地球環境問題が占めるまでになりました。 なぜこの時期に地球環境問題が採り上げられるようになったのかといいますと,冷戦が終結に向かい始めたからにほかなりません。
それまで先進7カ国サミットで何を議論していたのかというと,75年から80年頃まではエネルギー問題でした。 国際石油市場の支配権を掌握していたOPECに対して,先進7カ国が結束してどう立ち向かうべきかが,先進7カ国サミットの主要な議題だったのです。
二度のオイルショックから立ち直ってから後には,ソ連の脅威にどう対処するのかが,サミットの主要な議題に取り上げられるようになりました。 81年に R がアメリカ大統領に就任しましたが, R 大統領がソ連を「悪の帝国」と決めつけ,反ソ感情をあらわにしたこともあって,ソ連の脅威に対して先進7カ国が結束してどう立ち向かうかが,先進7カ国サミットの最優先の議題とされたのです。
ところが,85年に G が登場して以降,米ソ関係が急速に改善の方向へと向かい始め,東西緊張緩和の時代が訪れました。 そうなると,毎年1回,先進7カ国の首脳が集まって相も変わらずソ連脅威論を唱え続けるわけにはゆかなくなった。
何か格好のテーマはないかと探しあぐねていたところへ浮かび上がってきたのが,ほかでもない地球環境問題だったのです。 と同時に地球環境問題は,80年代末,バブル経済に酔いしれて,ぜいたくの限りを尽くしていた日本人のライフスタイルに対する,神(?)の警告でもあったのです。
地球環境問題は,いったい私たちに何を問うているのでしょうか。 その答えは「大量生産,大量消費,大量廃棄を旨とする20世紀型工業文明を見直し,新しい文明を構築すること」にほかなりません。

地球環境問題が私たちに問うているのは,この一言に尽きるのです。 大量生産,大量消費の20世紀型工業文明の発祥の地は,紛れもなく20年代から30年代にかけてのアメリカです。
自動車,家電製品などのモデルチェンジが頻繁に行われ,大量消費が煽られました。 何を作るにせよ,エネルギーとりわけ石油を大量消費します。
自動車が走るにはガソリンが欠かせません。 20世紀型工業文明は,石油の大量消費と同じメダルの両面の関係にあったのです。
20世紀型工業文明を,大量生産,大量消費,大量廃棄という三つの「大量」で言い表しましたが,三つ目の大量廃棄を付け加えたのは戦後の日本だったのではないでしょうか。 日本人ほど大量廃棄する国民は,私の知る限り世界に類例がありません。
アメリカで生活なさった方はご存知のとおり,アメリカにはガレージセールがあります。 土曜日や日曜日に住宅街を車でまわってみると,あちこちのガレージで,要らなくなった子供服,本,なくかま類,自転車などを安値で売っています。
要らなくなったモノを捨てずに,安値で売って他人に利用してもらおうというわけです。 日本人は総じて新しいモノが好きですし,中古品の市場も整っていません。
いわんやガレージセールのようなものはありません。 自動車の車検という規制があります。
この規制のおかげで,自動車の平均寿命は9.6年と10年未満にとどまっています。 他方,アメリカでは自動車の平均寿命は14.5年です。

5年もの開きがあります。 建造物の寿命もまた短い。
戦後,東京は一面焼け野原になりました。 当時は資材も乏しかったのでしょうが,とりあえず都心にオフイスビルが建ち並びました。
ちょうど20年後の東京オリンビックの頃,東京でピルの建てかえラッシュがありました。 それから20年後の1985年前後に,インテリジェントビルという言葉が流行し,再度,ビルの建てかえラッシュがありました。
ビルの寿命が20年などというのは,世界広しと言えども、日本だけではないでしょうか。

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